創造に関して言えば最終形は創造者の勇断によって決まるようである。つまり,最終形はないと言える。翻訳は文章作法に従い,原作者を前面に出して,翻訳者は背後に存在するものではあるが,翻訳者が疑似的原作者になりかわって訳文の中で跳梁する。その意味で翻訳もまた創造的営為と言える。ゆえに,翻訳にも最終形はないと言える。本論では,安房直子原作「きつねの窓」をテクストとして,その翻訳(1991年)の改訂をした。再度訪れて,翻訳実践から最終形への可能性を窺い,その里程標として実践から生じる理論を考察している。改訂版(Rendition 1997)は,表現のコントラスト,文化受容,言語の慣用と表現の結束のありかたを問いかけ,新たな問題を投げかけて来ている。
creation
finality
creative writing
author vs. translator
praxis and theory of translation
contrast
acculturation
idiomatic
coherence