山口医学

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山口医学 Volume 58 Issue 4
published_at 2009-08-31

A case of laparoscopic resection for primary omental torsion diagnosed preoperatively

術前診断を行い腹腔鏡下に切除し得た特発性大網捻転症の1例
Kawaoka Toru
Nagashima Atsushi
Hiraki Sakurao
Fukuda Shintaro
fulltext
1.08 MB
B030058000405.pdf
Descriptions
特発性大網捻転症は,明らかな器質的疾患を伴わずに大網の一部または全体が捻転する比較的まれな急性腹症である.臨床症状が典型的でないことから術前診断が困難とされていたが,腹部CTで特徴的な所見を呈するため,最近では術前に正診を得た報告も散見されている.今回,われわれは術前診断し,腹腔鏡下手術で根治し得た1例を経験したので報告する.症例は55歳,男性.主訴は移動する腹痛.来院時,心窩部に強い圧痛を認めた.腹部単純CTで,横行結腸の中央部腹側に渦巻き状構造を呈する腫瘤を認めたことから,特発性大網捻転症を疑い,腹腔鏡下手術を行った.腹腔内を観察したところ,赤黒く変色し硬化した大網を認めた.さらにその近位側で,反時計方向に約5回転,捻転している部分を確認したため,大網部分切除術を施行した.術後経過は良好で,術翌日から食事を開始,術後3日目に軽快退院した.特発性大網捻転症に対し腹腔鏡下手術で治療し得た症例は,本邦では自検例を含め,5例のみであった.急性腹症でCT検査により特徴的な渦巻き状構造を呈する腫瘤を認めた場合は,本症を疑う必要がある.さらに腹腔鏡下手術は診断の確定ならびに治療を低侵襲下に同時に行うことが出来るため,大変有用である.
Creator Keywords
特発性大網捻転症
腹腔鏡下手術
術前CT診断