症例は31歳男性,20歳時からCrohn病と診断され(診断時の所見など詳細不明),メサラジン,パラメタゾンによる加療を受けていた.22歳頃から痔瘻を合併していたが,28歳時,症状が増悪したため当科にてseton法で手術を行った.症状は軽快し当院内科に転科し,栄養療法を行ったが,肛門周囲膿瘍を形成したため2回目の手術を行った.術後,外来加療が可能となり,29歳時からインフリキシマブを6週毎に投与していたが,30歳時痔瘻が再発し,3回目の手術を行った.本症例はseton法で手術を行ってからは疼痛,排膿などの症状が軽減し,さらにインフリキシマブを併用することで炎症の低減が図られている.Seton法は侵襲が少なく,Crohn病に合併した痔瘻および肛門周囲膿瘍に対する術式として肛門機能維持や生活の質を保つ上で有用で,インフリキシマブ併用で更なる症状の改善が得られると考えられた.