【背景】山口大学の救急医学卒前教育は侵襲学と重症患者管理学を中心に行われてきた.【目的】救急医学の臨床実習で他の講座の臨床実習では習得しにくい知識や考え方をどのように習得しているか明らかにする.【対象】平成17年5月から平成18年10月に救急医学の臨床実習[ポリクリニック(ポリクリ)あるいはクリニカル・クラークシップ(クリクラ)]を受けた医学部5年生と6年生159人.【方法】1)臨床実習開始時に各講義担当者が作成したプール問題から毎回異なる試験(プレテスト)を行い,2週間後の終了時に同問題の試験(ポストテスト)を行い,その点数の変化を調べた(10点満点).2)前半に救急を回るグループ(前期グループ)と他科の臨床実習を先に終了したグループ(後期グループ)とでプレテストの成績を比較した.3)同時期に臨床実習に参加したポリクリとクリクラの学生間でプレテストの点数を比較した.4)プレテストで特に正解の得られにくい問題を検討した.【結果】プレテストの点数は6.2±1.4 (平均±標準偏差),ポストテストの点数は7.8±1.3で,有意にポストテストの点数が高かった(86名,p<0.001).前期グループ(36名)の点数(6.1±1.5)と後期グループ(41名)の点数(6.3±1.3)に有意差はなかった.ポリクリ学生(34名)の点数(5.5±1.7)とクリクラ学生(39名)の点数(6.1±1.4)に有意差はなかった.プレテストで正解の得られにくかった問題は,外傷の初期評価と治療,ショックの治療に関する問題であった.【結語】救急医学の臨床実習は外傷,ショックなどの他の講座で教えることの少ない領域を含んでおり卒前教育に不可欠である.学生は2週間の臨床実習で救急医学に関する知識や考え方を習得していた.
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