視覚系が複数の情報源から奥行情報を得る状況での奥行知覚について, これまでの実験心理学的研究の成果と問題点とを概観した。従来の奥行知覚研究では, 複数の手がかりから得た奥行情報を統合する過程と, 手がかりの間で奥行情報が不一致である事態への順応的変化の過程とが, それぞれ個別に研究されてきた。しかしながら, これら2通りの過程は実際には不可分であり, 日常場面での奥行知覚過程を理解するためにはそれらを統一して扱うことが必要である。これまでの研究で得られた知見を踏まえて, 奥行情報統合と順応過程の両方を扱うための奥行知覚過程モデルを提案する。