[はじめに] : 中学校の美術教育は、平成10年度の学習指導要領の改訂に伴い、鑑賞教育の充実が求められている。鑑賞教育の重要性については、作品を通して多様な価値やコミュニケーション能力の向上などといった観点からも理解が浸透しているように感じる。しかしながら、問題はどのように充実した鑑賞教育を行えばよいのかという点である。 成長過程において、中学校の3年間は人格形成を左右する大切な時期である。また、そのような中学生にとっては、知的欲求を促されることや美的価値能力を形成する機械を得ることは大切であり、その影響力をもっとも受けやすい時期である。よって、今回の研究テーマである実践的な鑑賞方法を試行する対象として、中学生に注目した。 美しいものや過去の偉大な作品を鑑賞することは、単に美しいという思いや感覚的な理解にとどまるだけではなく、なぜ、美しいと感じたのかを論理的に理解できるためにも一定の知識の獲得は必要である。そして、知識の獲得により意味のある鑑賞が可能となる。知的な刺激によって、鑑賞することに興味をもち理解することは、児童や生徒の成長過程となる人間形成にとっても有効的に影響するように考えられる。 本稿は鑑賞媒体と鑑賞方法の多様化を述べ、鑑賞教育のひとつとして、対話型と知識教授型を実施し、フリートーキングや知識の伝達が作品の理解やイメージの形成にいかに関連しているかを述べる。そして、それらの方法の意義と改善点を試行した。