【目的】保育所・幼稚園(以下,園)における自閉症児支援のための地域における発見・相談・療育・治療機関との連携,関連する園の職員体制,自閉症児の問題行動,児の障害に対する保護者意識の実態を明らかにするとともに,それらが連携状況に及ぼす影響を構造的に検討することを目的とした.【方法】研究対象は,平成19年に調査した山口県内の保育所・幼稚園のうち,自閉症児を受入れている143園である.解析は構造方程式モデルを用い,「園における職員間の協力体制」「自閉症児の問題行動」「児の障害に対する保護者の認識」の三つの潜在変数と,「障害の発見・相談機関との連携度」「障害の療育・治療機関との連携度」の二つの潜在変数の関連性を検討した.【結果】モデルの適合度はχ^2=156.49,df=112,CFI=0.913,RMSEA=0.049となった.「職員間の協力体制」は,「発見・相談機関との連携度」「療育・治療機関との連携度」のどちらにも有意に(p=0.014,p=0.020)関連していた.園における職員間の協力体制は,他機関との連携を促進する条件になることが示された.「自閉症児の問題行動」は,「発見・相談機関との連携度」と有意に(p<0.001)関連していた.自閉症児の問題行動のような明確な対応課題がある場合,発見・相談機関との連携が行われていることが示された.「障害に対する保護者の認識」は,「発見・相談機関との連携度」「療育・治療機関との連携度」のどちらとも有意な関連はみられなかった.【結論】保育所・幼稚園における自閉症児支援のために,地域における発見・相談・治療・療育機関との連携を進めるには,園での職員間の協力体制を充実することが必要である.