急性虫垂炎は,腹部救急疾患群のなかで高頻度にみられる疾患であり,かつ緊急手術の適応など迅速な判断が求められる.急性虫垂炎の誘因として,虫垂内腔の閉塞,腸管内細菌の二次感染などにより発症すると考えられている.急性虫垂炎は,時に非常に多彩な症状を呈するため,手術適応の迅速な判断にしばしば難渋する.このため当科においては臨床所見および血液検査上,急性虫垂炎が疑われる症例では原則として全例に腹部骨盤単純CTを施行し,手術か保存的治療かを決定する重要な判断材料としている.当科においての急性虫垂炎症例におけるCT診断の有用性について検討した.16列マルチスライスCTを導入した2004年3月から2008年11月に,当科にて急性虫垂炎の診断で入院治療を行った133例を対象とした.当科では炎症所見があり,単純CT検査にて虫垂内腔を閉塞する糞石を認める症例および虫垂周囲組織の脂肪織濃度の上昇を認めた場合も手術適応としている.133例のうち,69例に手術的治療を施行し,64例に保存的治療を行った.保存的治療を行った64例中13例が再発し,8例に手術を要した.CT診断により手術症例77例のうち50例(65%)に糞石を認めた.また保存的治療を行った64例のうち14例(22%)に糞石を認めた.なお,後者の14例中8例の糞石は小さく,虫垂内腔の閉塞は認めなかった.脂肪織濃度に関しては,CTのデジタル画面上での階調操作で蜂窩織炎性虫垂炎を容易に判別でき,患者が手術の自己決定を行う上でインフォームド・コンセントにおいて非常に有用であった.鑑別診断も含め,急性虫垂炎の診断,手術適応を決める上で,単純CT検査は非常に有用な検査である.