【背景】地域の医師不足解消の施策のための基礎データ作成のため,山口県の病院勤務医の必要医師数に関して,勤務時間の制限に伴い必要とされる医師数の算出を行うことを目的とした.【方法】データは山口県医師会が実施した山口県勤務医調査(回答率55%)を用いた.勤務時間の回答から,超過勤務(48時間以上)をなくすために必要な医師数(追加必要数)を推計した.本調査を現在の医師数(平成18年医師・歯科医師・薬剤師調査における病院従事者)に外挿し,追加必要医師数を診療科別に算出した.【結果】合計では,追加必要数/現在数は18.8%で,医師が2割程度足りないことが示された.回答数5以上の診療科でみると,追加必要数の割合が高かったのは心臓血管外科43.4%で,救命救急科37.5%,消化器科27.0%,消化器外科26.2%,泌尿器科24.4%,産婦人科24.1%,循環器科23.6%,脳神経外科23.2%と続いた.現在の医師数に外挿した結果,県全体での追加必要医師数は350名であった.追加必要医師数がもっとも多かったのは内科60名で,外科46名,整形外科31名,消化器科29名,循環器科26名,産婦人科18名,泌尿器科17名,麻酔科15名と続いた.【結論】本調査では,超過勤務を少なくする観点から必要な医師数を診療別に算出した.必要医師数については他の調査結果と合わせて考えなければならないが,特に追加必要数が多い診療科での医師数の増加ならびに労働環境の改善の必要性が示された.