閉鎖孔ヘルニアは,やせた高齢女性に多い比較的まれな疾患である.治療法は基本的に手術であり,そのアプローチは開腹法,鼡径法,腹腔鏡が挙げられるが,定型的手術術式は確立されていない.今回我々は,腹腔鏡を用いて嵌頓腸管を整復した後,下腹部小切開,腹膜前アプローチによるヘルニア修復術を施行し,良好な経過を得た症例を経験したので報告する.症例は82歳,女性.イレウスの診断にて緊急入院した.発症翌日イレウス管挿入されるもイレウス解除できず,3病日腹部造影CTを施行し,右閉鎖孔ヘルニア嵌頓の診断にて当科紹介され,同日緊急に腹腔鏡補助下右閉鎖孔ヘルニア修復術を施行した.3portにて,Richter型に嵌頓した小腸を鉗子にて整復.Stoppa法に準じて下腹部正中に約4cmの皮切を置き,Direct Kugel patch^[○!R]を使用し,ヘルニア修復術を施行した.術後は良好に経過し,再発を認めない.本術式は腸管損傷の確認,同側対側のヘルニア門の確認,確実なヘルニア修復の点で非常に有用であった.