肺切除後は胸腔ドレナージがルーチンワークとして行われるが,術後の疼痛,呼吸機能や運動耐容能の低下に影響し得る.我々は独自の空気漏れ閉鎖手順を考案し,本法はドレーン留置期間の短縮に寄与することを発表した.その後,空気漏れが確実に閉鎖されたか否かを手術中に確認する方法(仮閉胸試験)を考案し,閉鎖を確認できた症例ではドレーンを非留置としてきた.当施設で術後ドレーン非留置を意図して胸腔鏡下肺区域または葉切除が行われた162症例を対象とし,胸腔ドレーン非留置の安全性と有用性について後方視的に解析した.肺切除後に空気漏れを認めた症例には独自の方法で空気漏れ閉鎖を行った.閉胸前に一旦,ドレーンを留置した.その後の仮閉胸試験で空気漏れがなく,気管内挿管チューブを抜去した後に空気漏れがない症例に対して手術室でドレーンを抜去した.仮閉胸試験時または気管内挿管チューブの抜去に際して空気漏れを認めた症例にはドレーンを留置した.162症例中,102例(63%)において手術室でドレーンを抜去し(ドレーン非留置),60例でドレーンを留置したままとした.ドレーン非留置例では女性,喫煙歴のない症例,非COPD症例,CT画像上で肺低吸収領域が少ない(非肺気腫)症例が有意に多かった.術後30日死亡,在院死亡は認めなかった.非留置例で気漏再発によるドレーンの再挿入はなかった.非留置例は留置例に比べて術後合併症が少なく,術後在院日数が短く,安静時疼痛に関するペインスケールが術当日から術後3日目まで低かった.胸腔鏡下肺区域または葉切除後に一定の基準を満たした症例に対して胸腔ドレーンの留置を省略することの安全性が示された.さらにドレーンを術後に留置しないことは術後早期回復に寄与する可能性が示唆された.
The omission of postoperative chest tube drainage may contribute to early recovery after thoracoscopic major lung resection