症例は72歳女性.左腋窩腫瘤を自覚し当科を受診した.初診時所見では,左腋窩部(いわゆる乳腺堤)に径2cm弱の皮下腫瘤を触知した.超音波検査(US)で多房性の様相を呈していた.マンモグラフィー(MMG),USともに乳房内に明らかな異常所見はなかった.局所麻酔下に腫瘤摘出術を行なった.病理組織学的検査で粘液癌であった.estrogen receptor (ER), progesterone receptor (PgR)はともに陽性であった.PET検査にて全身検索を行ったが,明らかな異常所見はなかった.左腋窩副乳癌と診断し,生検部位を含めた追加切除ならびに左腋窩リンパ節郭清を施行した.病理組織学的検査で,癌の遺残はなく,またリンパ節転移もなかった.術後経過は良好で,術後第7病日に退院した.術後8ヵ月たった現在,再発なく外来にてletrozole投与継続中である.副乳癌はまれな疾患であり,今回我々は左腋窩部に発生した副乳癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.