症例は61歳,男性.IgG-κ型骨髄腫(Durie-Salmon分類IIIA期,国際スコアリングシステム3期)に対して,多剤併用化学療法,自家末梢血幹細胞移植を併用した大量メルファラン療法を行い,部分寛解を得るも再燃.その後に試みたサリドマイド療法,ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DEX)療法は副作用にて継続できなかった.難治性骨髄腫に対してレナリドマイド(LEN)療法を開始したところ,LEN投与2日後に四肢,体幹に掻痒のない蕁麻疹様紅斑が出現した.LEN投与開始早期の発症であることから薬疹を考え,LENを中止して抗アレルギー剤,グリチルリチン酸製剤,低用量ステロイド剤の投与を開始した.これにより皮疹は速やかに消退したため,抗アレルギー剤のみ継続投与してLENを単独で再開した.しかし,再開3日目に同様の皮疹が出現したため,LENを再び中止してステロイド剤を同量で再開した.皮疹の速やかな消退を得た後に三度LENを再開したところ,やはり再開2日後に皮疹の再燃をみた.これに対し,グリチルリチン酸製剤を経口薬として併用したところ,以後は皮疹の増悪はなく,完全に消失はしないものの軽度で経過し,LEN1コースの投与が可能であった.以降のLEN投与時には,ステロイド剤,抗アレルギー剤,グリチルリチン酸製剤の3剤を併用した.皮疹の出現はごく軽度にとどまり,LEN投与を中断することなく治療可能であった.LEN投与により貧血は改善し輸血依存を脱し,かつ5コース後にはIgG値も5883 mg/dlから1184 mg/dlと減少し,治療効果は良好であった.LENによる皮疹に対してのグリチルリチン酸製剤の使用報告はこれまでにないが,本例では皮疹のコントロールにグリチルリチン酸製剤の追加投与が有用であった.このような副作用対策を講じることでLEN投与が継続可能となった意義は大であった.
A 61-year-old man with refractory myeloma was treated using lenalidomide(LEN)as salvage therapy. Three days after initiating LEN therapy, skin eruptions appeared on his limbs and extremities. The eruptions rapidly disappeared on discontinuing LEN and initiating therapy with low-dose prednisolone(10 mg/day),olopatadine, and intravenous glycyrrhizinate. The eruptions recurred at the time that LEN was readministered and did not disappear on administering only prednisolone and olopatadine. Additional therapy with oral glycyrrhizinate effectively controlled the eruptions, and therefore, the patient was allowed to continue LEN therapy.