山口医学

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山口医学 Volume 6 Issue 1
published_at 1957-03

Psychologicl Analyses on a Case of Aphasia Following Head Trauma

外傷による一失語症の症状分析
Kobayashi Shigeru
Kimura Jiro
Descriptions
当患者は、右側頭頂部に打撲を受けて左側側頭骨に亀裂骨折を生じており、左側に僅かな異常身体症状を呈し感覚失語をきたした59才の右利の男である。即ち、言語理解の障碍最も表面に現れ、自発言語はその感性言語にはさ程の困難を示さないのに、呼称、複唱の障碍が著明で錯語も多く、読字においては錯読があり、書字においては錯書を認め、文の構造が纏まらず、計算力も不良であるが、模写は健全である。尚構成的、概念的思考の障碍は軽度であるという1例である。以上は患者が入院してからの82日間の全経過を一横断面として捉えた結果になつているが、その間において諸症状が不変に終始した訳ではない。受傷当時の全失語症が軽減して感覚失語症となつた如く、入院当初から今日迄はかなり症状軽快して来ているが、而もこの間を貫く主徴候は、Bingの分類に従うところの皮質感覚失語であり、強いていえばこれに超皮質運動失語の部分症状たる健忘失語が附随したものである。又Krollの言う頭頂葉失語に側頭葉失語が幾分加わつているものとも考えられるが、本例は一応古典的分類のBingの皮質感覚失語に類型化し切つて大過ないものといえよう。