山口医学

山口大学医学会

PISSN : 0513-1731
NCID : AN00243156

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山口医学 Volume 58 Issue 3
published_at 2009-06-30

A case of Waterhouse-Friderichsen syndrome by fulminant pneumococcal infection with hypoplastic spleen and diabetes mellitus

脾臓低形成・糖尿病例に発症した劇症型肺炎球菌感染症によるWaterhouse-Friderichsen症候群の一例
Koga Mayumi
Kawaoka Toru
Ariyoshi Kunio
Ishihara Tokuhiro
Oda Rie
fulltext
3.09 MB
B030058000302.pdf
Descriptions
症例は72歳,男性.糖尿病の既往あり.突然の高熱と腹部膨満感,軽度の意識障害を認め当院に入院した.呼吸器症状は特に認めなかった.入院翌日より意識障害が急激に進み,呼吸状態が悪化した.血液検査上,白血球数の急激な低下,肝機能の急激な悪化に加え,血小板数の低下,PT,APTTの著明な延長を認めた.皮下出血などの明らかな出血症状はみられなかったが,播種性血管内凝固症候群(以下DIC)の可能性が示唆された.全身管理を行ったが,病状は急激に悪化し,同日死亡した.血液培養で肺炎球菌が検出されたことがその後判明した.病理解剖では,両側副腎に広範な出血がみられた.脾臓は低形成で広範な出血,壊死を認めた.全身臓器にグラム陽性球菌の集簇を認めるが,好中球の浸潤は全く認めなかった.以上から,今回の病態は劇症型の肺炎球菌敗血症を起こし,急性副腎皮質機能不全を生じたWaterhouse-Friderichsen症候群と考えられた.脾臓低形成と糖尿病は感染症のリスクを高めるが,本症例のような肺炎球菌によるWaterhouse-Friderichsen症候群は稀な症例である.肺炎球菌は近年ワクチン接種が推奨されており,市中肺炎の原因菌であるとともに,本疾患の一原因菌であるということを念頭に置くことで,類似した症例において早期の鑑別診断を行うことが出来ると考える.
Creator Keywords
Waterhouse-Friderichsen症候群
脾臓低形成
副腎出血
糖尿病
敗血症