加齢による睡眠障害の増加は広く知られているが,要介護高齢者,なかでも施設に入所している要介護高齢者に関する先行研究は少ない.本稿では,はじめに要介護高齢者の睡眠に関する研究の動向について述べ,続いて,施設に入所している要介護高齢者を対象とした一連の研究から得た知見について述べる.一連の研究においては,まず,睡眠・覚醒パターンの実態を把握し,睡眠・覚醒パターンに影響を及ぼしている要因について検討した.介護療養型医療施設の入所高齢者76名(男性17名,女性59名,平均年齢82.2±8.1歳)を対象とし,看護・介護職員の観察による59日間の睡眠日誌から得た睡眠データから算出した睡眠指標と睡眠に関与すると考えられる要因との関連を調べた結果,睡眠指標と年齢,Barthel Index得点,HDS-R得点,アクティビティケアへの参加頻度との間に関連が認められた.これら4項目を独立変数とした重回帰分析を行ったところ,アクティビティケアへの参加頻度が最も多くの睡眠指標に関与していた.次に介入研究として,認知症を有さない要介護高齢者9名(男性5名,女性4名,平均年齢78.0±9.1歳)および認知症高齢女性8名(平均年齢85.1±7.7歳)を対象にアクティビティケアによる介入を行い,コントロール期30日と介入期36日もしくは30日の睡眠・覚醒パターンを比較したところ,コントロール期と比較して介入期では総睡眠時間が増加するなどの結果が認められ,アクティビティケアへの参加が睡眠・覚醒パターンに望ましい効果を与えることが示唆された.以上より,アクティビティケアへの参加は要介護高齢者の睡眠・覚醒パターンの改善に有効であると考えられ,一連の研究は,高齢者ケアの現場において睡眠改善のための介入を考える際の有用な資料となったと考える.