症例は64歳の男性で,近医で肝機能障害を指摘され,精査目的に当院に紹介された.胆嚢から上部胆管にまで至る壁肥厚を認め,膵実質内の下部胆管にも狭窄像を認めた.腫瘍マーカーはCA19-9が軽度高値であった.胆嚢癌および胆管癌の診断で手術を施行した.胆嚢病変は総肝管にまで浸潤波及しており膵頭十二指腸切除術および拡大胆嚢摘出術,総胆管切除術を施行した.病理組織学的には胆嚢病変,下部胆管病変ともに高分化型管状腺癌であったが,両者の間には連続性がなく,同時性重複癌と診断した.胆道系の悪性疾患では手術単独での成績は不良で有効な化学療法の開発が望まれるが,まだエビデンスは少なく今後の課題である.本症での胆嚢癌の進達度はsiであり(壁外性に胆管への浸潤が高度であった)極めて予後不良と予測されるが,術後早期より補助化学療法を施行し,術後3年経過する現在生存中である.以上,同時性の胆道系重複癌の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
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