Yamaguchi journal of economics, business administrations & laws Volume 71 Issue 3-4
published_at 2022-11-30
資産価格はしばしばファンダメンタル・バリューから乖離し,時として金融市場は資産価格の大きな下落や変動に見舞われる.急激な資産価格変動を緩和するための措置として,多くの国々で空売り規制が導入されてきた.本稿は空売り規制の導入が資産価格に与える影響を分析する.私的情報や価格支配力を持つ投資家と私的情報を持たない価格受容的な投資家が混在する資産市場を想定する.空売り規制の導入が事前に予期されていない場合,空売り規制が資産価格をファンダメンタル・バリューから乖離させることが明らかになった.これは資産価格の変動を大きくすることにもつながる.とりわけ資産価格の下支えが望まれるような下落相場の状況では,空売り規制の導入はより一層の価格下落をもたらすことになる.