本論は昨年夏以降の国内の株式市場低迷局面において、個人投資家が一般的なソフトウェアを実装しただけのパーソナル・コンピュータで簡易な構造の線形計画法を用いた意思決定をしていたらどの程度財産の減少を食い止めることができたかを、モデルの意思決定に現実データの伸び率を反映させたシミュレーションによって検証する。結果としては特定時点での流動性が高く要求されるならば本論で使用した線形計画モデルは有効である。何もしない場合の半分以下の下落率である。しかし、目的関数が現金換算額の最大化のみに配慮しているために株価市場の低迷が数ヶ月継続すると株式の現金化をどんどん進めることになっていった。今回の低迷局面へのモデルの適用では、株式投資に関するモデル構築に当たっては現金換算額だけでなく、株式保有の下限値の設定や各株式の保有比率に対する条件付けなどにも配慮する必要も示された。