Bulletin of the Faculty of Education, Yamaguchi University Volume 72
published_at 2023-01-31
水溶液からのL-ヒスチジンの結晶核形成機構を解明するため,pHをジャンプさせることによって得た幾つかの濃度の過飽和水溶液中から結晶核が形成されるまでの時間(誘導期tind)を測定した。測定された誘導期tindを用いて結晶核形成理論に基づいた速度論的解析を行った結果,それらの溶液中で形成された結晶核の表面張σ ,臨界核形成の自由エネルギーΔG *,臨界核の半径r *,臨界核を形成する分子数n など,結晶核形成に関する重要なパラメータの値を定量的に求めることができた。pH6〜pH7の間で行った実験からは,L-ヒスチジンの臨界核は数個から十数個程度の分子からなる半径1〜2nm程度であり,過飽和度が高くなるにつれて,その大きさは小さくなることが明らかになった。