文は, 話し手が外在的・内在的な因素に基づいて作り出した事柄的な内容と, その事柄をめぐる話し手の主体的な捉え方及び心情・態度のあり方が含まれる, と考えられる. 日本語の場合, 膠着的な言語であるため, 後者は文の末尾に位置していると考えられてきた. しかし, 文の初頭にも感動詞類などが来ることから, 心情・態度が現れることが観察される. このことから, 文の初頭及び末尾には, 同じような性質を持った要素が現れる可能性があることが予測される. 文の初頭及び末尾はどうなっているか, 互いにどのように関連するかについては, 従来のモダリティ論の観点では不明な点が残っている. 本稿では, 自然談話のデータを利用して, モダリティ論と異なる観点, 即ち言語行動の観点から, 文の初頭および末尾に現れる性質を分析した. その結果, 初頭行動と末尾行動は, 聞き手に関わる言語行動と命題に関わる言語行動とによって構成され, 両者は鏡像関係にあるという性質が判明した.