話し言葉による談話において, 述語を修飾する文成分として一般的に論じられてきた直接目的語は, 述語から離された状態で出現することがある. その際, 発話の構造がどんな形式を取るのかということについて本稿で考察する. 自然談話のデータ(テレビトーク番組より収集した会話)分析を通して, 直接目的語が述語から切り離されている発話構造(遊離構造)にはいくつかのパターンがあることが分かった. 直接目的語が述語から切り離される現象を「遊離現象」と呼ぶと, それぞれのパターンにおいて, 遊離現象を伴い直接目的語と述語の間に他の要素が出現することがある. それらをまとめると, 遊離現象が起こるには, 「命題実現」と「談話進行管理」という主な要因が2つあることが分かった. 2つの場合においては, 直接目的語の振舞いも異なる. 命題実現によって遊離が起こる場合, 直接目的語は構造的に孤立させられる構造が形成される. また, それと異なり, 談話進行管理によって遊離が起こる場合, 直接目的語の出現が他の要素が現れることの原因となる構造が形成される.