現在, 日本の高齢化率は約25%になり, 居宅サービスを受けている者は約65%である. 2055年には団塊世代が高齢者となり, 高齢化率39.4%という超高齢社会になる模様である. 要介護高齢者が増えつつある中で, 介護事故の多発と介護従業員の早期離職が問題になっている. 介護事故のリスクマネジメントに関する研究はいくつかあり, リスク分析とその対策が論じられてきたが, 介護事故と介護従業員の早期離職の関係は論じられていない. 本稿では, 山口県及びその周辺都市の介護施設に対するアンケート調査と聞き取り調査を行い, 介護現場での事故が職員の働きやすさやモチベーション, そして離職行動に及ぼす影響を分析する. そしてリスクマネジメントの強化を通じた職場環境の改善が, 職員の早期離職を抑え, 長期勤続を促し, もって人的資本の蓄積とキャリアの形成に寄与することを明らかにする.