本論文は,日本の大学が「教育のグローバル化」や「グローバル人材の育成」を標榜し,2004年の国際教養大学(秋田県)以降,「国際」あるいは「グローバル」という名を冠した学部が続々と開設されている。しかし,文部科学省や大学がさまざまな施策や教育プログラムを導入してきたにもかかわらず,日本人海外留学生の増加には必ずしも明示的には結び付いていない。では,なぜ,日本人学生は海外留学に対して,以前ほどまでの強い関心を示さなくなったのか。このことについて,本稿では,「カリキュラム」と「日本の固有の社会システム」いう切り口から分析し,日本におけるグローバル人材育成の課題を明らかにする。分析の結果,「新卒一括採用制度」による「就職活動の早期化と長期化」,「単位互換(認定)制度の未整備と学事暦の違い」といった日本固有の雇用慣習がグローバル人材の育成を阻害する大きな要因となっていることが明らかになる。さらに本稿では,留学中でも就職活動に参加できるような仕組みを官民一体となって構築していくことを提案する。産業・経済の急速な高度化・グローバル化が進行する中で,我が国が現在の豊かさを今後も享受し続けるためには,「世界の中の日本」を今一度,明確に意識する必要性を提言する。なお,2018年10月9日に経団連が「新卒一括採用」の廃止を決定した。このように徐々にではあるが,海外留学を阻害する日本固有の制度の見直しが行われている動きも併せて紹介する。