Journal of higher education

山口大学教育・学生支援機構

EISSN : 1349-4163

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現在, 通信制課程の高校および生徒は増加傾向にある。1990年代以降, 通信制課程においては, 既存の高校教育の教育システムや教育方針を変える新しい教育の模索が行われている。通信制課程の実態を把握することは, 入学者受け入れを見直す上において重要と考え, 全日制課程との比較から通信制課程の進路選択を把握した。結果, 通信制課程の生徒は, 他者との比較の中で生じる能力アイデンティティの揺らぎや自己意識が高校卒業後の進路希望に影響せず, 大人の勧め等の影響を受けながら「高等学校卒業」という目的に向けて自分が選択した学びを進めているようすが明らかになった。
PP. 1 - 9
本稿の目的は, 山口大学AO入試の実施20年という節目にあたりAO入試の改善を見直し, 今後の総合型選抜改善の課題を明らかにするとともに, 入学者追跡調査による入試の検証の在り方の課題を明らかにすることである。今後, 追跡調査の重要性が増す中, これまでの山口大学の入試効果検証を維持しつつ, 総合型選抜においては新たな志願者獲得に向けての抜本的な見直しが必要と考える。
PP. 10 - 24
山口大学留学生センターでは, 学部1年生対象の教養コア系列キャリア教育分野科目「知の広場」において「海外留学」に関する講義を行っており, 2021年度は1000名以上が受講した。受講後に学生が作成したコメントをKH Coderで分析し, コロナ禍における学部1年生の海外留学への意識を探った。その結果, 先行研究で留学の阻害要因と指摘されている費用・留年・語学力といった項目について講義で情報を得, さらに海外留学経験者の体験談にふれることで留学の希望を明確にする例や, 留学はしないが国内の身近な環境での国際交流や新たな経験に言及する例など, 1 年生の段階で留学に関する情報提供を行うことの有用性が示唆された。
PP. 25 - 35
大学時代にジェネリックスキルを計測した学生の追跡調査によると, 社会人の仕事満足には, 職場からの評価・キャリア自律・自主的な学びが影響している。そこには大学時代の行動持続力・自信創出力との関連が見られる。別の調査では, 地元志向の学生は行動持続力のスコアが有意に低いとの結果が得られた。社会人の仕事満足の観点から, とりわけ地元志向の学生に対して, 行動持続力をはじめとした対自己基礎力を高めるキャリア教育の強化が求められる。
Hirao Motohiko Matsumura Naoki
PP. 36 - 41
障害等のある学生へ情報保障の方法として音声認識技術の活用が進んでいるが, より有効に活用するためには認識率の担保や運用方法の工夫が必要となる。本稿では, 音声認識技術と補聴システムとを組み合わせた情報保障の質の向上のために, 端末や機器の使用方法を工夫する余地がどの程度あり得るのかについて, 実証実験結果をもとに分析する。実証実験からは, 同じ動画教材でも音量の調節や, 機材の組み合わせにより認識率に差異があることが明らかとなった。一方で, 動画教材の音源の鮮明度等によっては, 技術や機器の使用方法による認識率に大きな開きは見られなかった。このことから, 情報保障機材等の工夫がある程度有効であるものの, 発話や教材作成時の雑音への配慮が必要であると言える。
PP. 42 - 49
本研究は新型コロナウイルス影響下の2020年及び2021年に本学F学部に入学した学生163名を対象に, 入学当初である4~7月の歩数を調査した。歩数は各自が所有するスマートフォンに保存されている数値とした。本学の2020年4~7月の授業形態はオンライン授業, 2021年4~7月は対面授業が主であった。調査の結果, 2020年入学生の歩数(2811±1418歩)は2021年入学生(4346±1305歩)より有意に少なかった。また両年共に男性の方が女性より歩数が多く, 月別では4月の歩数が多かった。いずれの年も大学生の至適活動量を大きく下回っていた。以上から新型コロナウイルスによる活動自粛及び授業形態は新入生の歩数に影響を与えていた。
PP. 50 - 53
本稿は, 英語で研究活動を行う理系大学院留学生を対象とした「生活日本語」の授業の実践にもとづき, 入門レベルにおいて, タスクを取り入れ, 課題遂行を重視した授業テザインを検討するものである。実践にあたっては, 日本語教育における動向や関連する教育実践を概観し, 理系大学院留学生の日本語教育に対するニーズや, 日本語学習を継続する際の問題点を整理した。本実践の結果, (1)課題遂行を重視する授業デザインになじめない学習者がいた, (2)学習者が, タスクを導入した授業についてどのように捉えていたか, タスクの達成度をどのように考えていたかを明らかにするために, 学習者による評価を実施する必要がある, (3)日本語プログラム全体における本授業の位置づけや, 他のコースとの接続を検討する必要がある, といった課題が明らかになった。
PP. 54 - 61
山口大学生の日常生活における二酸化炭素排出量を共通教育の「環境と人間」の授業課題からアンケート調査により集めた。電気, ガス, 水道, 燃料, 廃棄物等のエネルギー消費量を基に換算係数を用いて二酸化炭素排出量を算出した結果, 平均値は1.9t-CO2/(年・人)であった。生活に伴う二酸化炭素排出量の電気及びガス項目からの合計は80%以上を占めた。エネルギー総量について学生生活の10 年間の差, 学部による差, 男女の差は, 多少見られたがエネルギー項目に特徴が見られた。1 人暮と家族暮では, 家族暮らしの方がエネルギーを多く消費する事が判明した。また, 家族暮では燃料として灯油, ガソリンの割合が大きく山口大学の立地条件から移動手段として車が多用されている事が考えられる。我が国の家庭部門の二酸化炭素排出量は1.32t-CO2/(年・人)であり(2020年度), 本調査結果の1.86t-CO2/(年・人)は約40%大きいが, 車を使った移動による燃料分を考慮すると妥当であることが確認できた。また電力の換算係数値が10年で約10%の減少に伴い, 二酸化炭素排出量が減少することが確認できた。本調査から山口大学生の生活の二酸化炭素排出量の実態が確認できた。
PP. 62 - 66
この度, 第51回中国四国大学保健管理研究集会を, 同研究集会当番校として, 本学で8年振りに開催した。昨年の第50回研究集会に続きコロナ禍での開催となり, 医学部附属病院オーディトリアムを配信会場としてのハイブリッド開催という形式で行った。多くの方々の参加・協力を得て, 無事開催することができたので報告する。
PP. 67 - 69
マーチン・トロウ氏による「高等教育システムの段階」, いわゆるトロウモデルにおいて日本の高等教育機関は2004年以降「ユニバーサル・アクセス型」に移行している。結果, 文部科学省も示すように高等教育機関において正課外活動の充実が必要不可欠なものとなってきた。正課外活動を実施していく上で資金は必ず必要であり, それを得るための申請を行う機会も学生にとって少なくない。本稿は, 着想のきっかけ, 着想の価値や位置づけ, そしてプロジェクトのおもしろさについて, エッセイ的に記したものである。
PP. 70 - 79
大学での教育は正課外活動も含めて学士力の育成や人格形成(社会性の醸成)を行っていくべきである。ただ, どのような正課外活動であっても実行するには必ずお金がかかると考えたほうよく, 学生は様々な機関の活動資金支援制度に申請して助成を受けることもあるだろう。本稿はそうした活動資金支援の申請書の作成ポイントについて, 申請書の骨子の作成, ポンチ絵の紹介と必要性および作成ポイント, 必要経費欄のまとめ方, 構成員状況提示の意味や意義, 申請書として作成するときや提出に関する注意事項, というまとめ方でエッセイ的に記したものである。
PP. 80 - 87