Journal of higher education

山口大学教育・学生支援機構

EISSN : 1349-4163

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2021年度入試からの実施を目指した大学入試改革は, 改革の柱であった大学共通テストにおける記述式問題の導入, 大学入試英語成績提供システムの導入, 大学入試の選抜資料として高校調査書の積極的活用が見送られ, 大学は引き続き検討をしなければならない。18歳人口が減少する中, 大学は日本人の18歳入学者を主な対象として想定してきた従来のモデルから脱却する必要がある。山口大学における次なる入試改革の課題は何であるのか, 山口大学の入試の現状, 山口県の高校生の状況を再検討することが本稿の目的である。
PP. 10 - 22
大学生の地元志向の特徴のひとつである「移ろい」に焦点をあて, 高校生から大学生としての就職活動終了時まで各段階での意識をとらえる。狭い地元志向・広い地元志向・非地元志向の3区分で計測すると, 地方出身学生の約6割は, どこかのタイミングで変化する。就職活動の結果と比較しても, 就活初期段階からは25.5%が, 大学初年次からは36.8%が, なんらかの変化を経験していることがわかった。移ろいがもたらされる要因の解明が課題として残される。
PP. 33 - 37
本年度は, 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために遠隔授業が導入されるなど, 授業形式の多様化がみられた。連動して, 障害等のある学生への授業中支援の方法にも工夫が必要となり, 同時に面談でもオンラインを試行するなどの新しい試みを行う必要があった。本稿では, コロナ禍における障害等のある学生への修学支援について, 山口大学の取組を紹介する。具体的には, コーディネート業務・授業中支援・学生対応それぞれへの影響を概観するとともに, ポストコロナに向けた課題を整理しておきたい。オンラインを含め, 多様な学生を想定した授業プランの準備, 授業目的に合わせた効果的な支援手段を選べる環境整備が重要である。
PP. 38 - 47
2020年3月以降のCOVID-19拡大を受け, 令和2年度の学生定期健康診断は, (1)健診項目削減, (2)対象者絞り込み, (3)受検前14日間の行動歴・健康観察表の記録, (4)体調不良者の受検拒否, (5)マスク着用・手指消毒, (6)換気と間隔をあけての整列等を徹底して行った。結果的に, 健診をきっかけにしての感染という事態は起きなかったものの, 学部生の受診率低下につながった。次年度に向けて, 安全で有益な健診計画を立てて実施していきたい。
PP. 48 - 51
文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」が2019 年度末をもって終了した。全国42 地域で繰り広げられた取組について一定の検証を行う必要があろう。地元就職率というKPI(Key Performance Indicator)に注目が集中しがちであるが, COC+事業を通して, 学生の学修成果のほか, 各地域に与えたインパクトは大きいものと考えられる。本稿では, 山口大学が中心となったCOC+事業における地域人材育成プログラム(やまぐち未来創生人材(YFL)育成プログラム)を考察材料に, 地域人材育成プログラムの開発・運営・成果を振り返り, 若者の地元定着はもとより, 多様な高等教育機関が協働して同一のテーマに取り組んだ価値や今後の課題について考察する。
PP. 1 - 9
近年, STEAM教育は世界的に注目されている。問題解決能力, 設計能力, 実践能力の育成を重視するSTEAM 教育は, 中国においても活発化している。2016年の中国の『教育情報化「十三五」計画』では, 「分野横断的な学習(STEAM教育)」の新しい教育方法において, 応用を積極的に探求し, 学生の情報的素養や革新的意識と創造能力を向上させることに力を入れるとしている。本研究は中国の学者, 鄭葳の『中国STEAM教育発展報告』に基づいて, 現在の中国のSTEAM教育について民間教育と学校教育の二つの側面から実践状況を紹介し, STEAM教育の発展に直面する問題を分析する。さらに芸術や美術教育を例として大学教育におけるSTEAM教育システムの意義と役割を検討する。このことは日本の義務教育, 高等教育で今後のSTEAM教育の検討材料の一つとなる。
Fukuda Takamasa Yang Shi-wei
PP. 23 - 32