Journal of East Asian studies

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Journal of East Asian studies Volume 18
published_at 2020-03

Bidirectional relation between human and things in comb-making : practical knowledge of comb-making and the bricolage of comb-making

櫛製作をめぐるヒトとモノの相互的関係 : 櫛製作の「身体知」とブリコラージュ的実践
Guo Ruiqi
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3.85 MB
D300018000006.pdf
Descriptions
本稿は中国貴州省黔東南州施洞鎮の苗族女性が使用している櫛に着目し、主にその櫛が製作される過程を中心に、職人と櫛がどのような関係を構築しているかを明らかにしたものである。これまでの物質文化研究における苗族の頭飾(櫛を含む)に関する研究は、櫛が反映する文化の意味や価値の還元に集中しており、その文化的意義や芸術的価値が議論されてきた。管彦波は櫛を飾り物とした歴史について文献的な調査と苗族の頭飾りの社会的機能と象徴的意義について次のような分析を行った。その結果、苗族の櫛は1つの典型的な頭飾りとして、①苗族グループの地域性を示す、②様々な文様は苗族文化を象徴する、③芸術性を備えている、という3つの結論を得た(管彦波1993:80-93)。櫛の文様は従来、一定の文化的な意味を持つものとされてきた。物質文化研究では、これまで人間を中心とし、櫛や装飾品を従属的な位置に置いて議論してきた。従来の研究では苗族櫛とその文様の製作過程という重要な点が見落とされてきた。本稿は従来の人間中心主義的な「ヒト/モノ」の構図を超えて、櫛というモノの製作過程に焦点を当てたものである。すなわちモノを使用するあるいは製作する時に物理的に出現する状況に注目し、ヒトとモノとの相互的な関係を考察する。つまり、先行研究で見落とされてきた、苗族の櫛およびその文様が、その時、その場の状況に応じて偶発的に出現する過程に注目する。具体的には、苗族の櫛職人の一連の櫛製作過程の中に現れる「身体知」を考察し、ブリコラージュ的実践によって作り出される、櫛と「道具」と文様の関係を考察したものである。本稿では櫛製作の過程を詳述し、そこで現れた「身体知」とブリコラージュ的実践による製作から、ヒトとモノの相互的関係を明らかにした。