MFCA、SBSC、エコ・エフィシェンシーは企業の環境経営に有用なツールとしてそれぞれの役割、機能を持っているが、その限界の存在も否定できない。そこで本稿では、先行研究のサーベイと中国製造企業に対するアンケート調査を通してMFCA、SBSC、エコ・エフィシェンシーの3つの環境配慮型マネジメントツールの統合とそれによる各ツールの問題点改善の可能性について考察する。主な結論は次の通りである。MFCA、SBSC、エコ・エフィシェンシーの統合可能性を考察した先行研究は非常に少ないが、その数少ない先行研究をサーベイすると次のような理論的示唆が得られた。MFCA には生産マネジメントと現場従業員との間のコミュニケーション障壁ならびにコスト削減効果を重視し過ぎるあまり環境保全効果を軽視してしまう問題点が指摘されているが、これはSBSC との統合により改善する可能性がある。SBSC には視点間・指標間の因果連鎖構築が難しいという問題点があるが、これはエコ・エフィシェンシーとの統合により改善する可能性がある。エコ・エフィシェンシーには環境パフォーマンスが悪化しても経済パフォーマンスが向上するだけで指標が向上してしまうという問題点があるが、これはSBSC との統合により改善する可能性がある。アンケート調査を通して次のような結果が得られた。実際に中国製造企業16社においてMFCA、SBSC、エコ・エフィシェンシーの3つのツールが同時利用されており、この事実は統合利用の可能性が高いことを示唆している。またMFCA、SBSC、エコ・エフィシェンシーはそれらを同時利用している場合と単独で利用している場合のいずれにおいても財務向上に効果があったが、同時利用の場合は単独利用の場合よりも環境パフォーマンスの向上により効果があった。さらに同時利用している企業においてはMFCA、SBSC、エコ・エフィシェンシーそれぞれの問題点が改善されている可能性があることも推測できた。