外国にルーツをもつ児童生徒は、日本の高校進学/卒業において困難を抱えやすく、そのため、これまで外国にルーツをもつ児童生徒においては、不就学、不登校、高校進学・中退に関する研究が多く蓄積されてきた。本稿では、大学進学を実現した中国にルーツをもつ大学生がどのような状況でどのような対処・方略をもって進学できたのかを明確にすることである。筆者は、彼/彼女のライフヒストリーについてインタビュー調査を行い、来日時の在留資格と出願資格によって、4つのパターンに分類して分析を行った。分析結果は次の通りである。第1に、外国にルーツをもつ児童生徒が日本の大学へ進学するためには、高校時代だけではなく、来日当初における日本語の習得、日本の学校・社会への環境適応ための重点的配慮も必要である。第2に、外国にルーツをもつ児童生徒にとって、日本での生活に馴染むまでは同級生との人間関係が担任の先生との人間関係より必要になるが、しかし、大学進学時期においては教員の助けがなくてはならない。第3は、成績の良い人が必ずしも大学に進学できるわけではなく、自身の努力以外に、日中の入学試験制度の違いやもっている資格などを精査して戦略的に利用できることが進学において重要である。以上の結果から、本稿では調査対象者の共通性と結果から得られた示唆を指摘した。また、今回の研究では中国にルーツをもつ児童生徒を対象としたが、中国以外の外国にルーツをもつ児童生徒の進学行動における方略の解明も今後必要となる。