本研究では、男性顔の時代変化とそのメカニズムを明らかにするために、日本を代表する美男子コンテストである「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」のBEST30通過者の顔写真を題材として検討を行った。まず、1988年から2021年までのBEST30通過者を4つの時期ごとに分けて、それぞれの時期の美男子平均顔を作成した。次に、大学生を対象者としたアンケート調査において、ランダムに並び替えた4種類の美男子平均顔について、①印象評価と②恋愛相手・結婚相手としての魅力度を測定した。そしてさらに、美男子平均顔に対する魅力度の違い(選り好み)を説明するための変数として、対象者の③結婚観・子ども観など配偶戦略について尋ねた。
このようなアンケート調査を行った結果、①最新の美男子平均顔ほど、より「穏やか」で「女性的」、「ひ弱」と評価される傾向があり、美男子平均顔の「脱男性化」が主観的印象ではなく、客観的事実であることが確認された。そして、②最も「穏やか」な最新の美男子平均顔に対して、半数以上の女子学生が恋人・結婚相手としての魅力を感じており、その割合は男子学生の予想を大きく上回っていた。さらに、③このような女子学生の選り好みは、結婚相手の経済力を重視しない姿勢や子どもへの従順性の期待、ブレイン・フォグ頻度の低さなどとも関連していた。
これらの知見にもとづけば、美男子平均顔にみられる「脱男性化」の傾向は、女性の選り好みを反映しており、女性の選り好みは、恋愛や結婚、子育てに関する配偶戦略の変化の影響を受けていると考えられる。ただし、先行研究によれば、男性顔の「脱男性化」は、先進諸国に広く見られるだけでなく、人類史全体を通じた一貫した傾向でもあると指摘されている。これらの指摘を前提とするならば、「脱男性化」した男性顔への選り好みは、時代変化を超えた頑健な傾向であり、人類の「自己家畜化」をもたらしている大きな要因の一つとも考えられる。
Takahashi Masahito
Somekawa Misato
PP. 71 - 84