Bulletin of the Faculty of Education, Yamaguchi University Volume 73
published_at 2024-01-31
品詞をどう特定するかは議論のあるところである。基本的な文法を学ぶ際、この単語は名詞、これは動詞と、単語に貼り付けられた特徴のように教えられるし、そうした品詞分類は言語現象を理解するには有効である。しかし、実は、品詞を決定する基準は必ずしも明白ではない。辞書での記述も一つの語に複数の品詞が示されていることは多い。英語の歴史的背景からいえば、形態的特徴、統語的特徴いずれからも捉えることができ、複雑である。ただ、実際の使用においては、言語使用者は、英語の歴史とは関係なく、自分の知識の範囲で自分の知っている語彙を駆使するのである。その点で、品詞転換という現象は、言語使用者の創造的な活動という捉え方もできる。本稿は、主に共時的観点から、小説の言語にみられる品詞転換の現象を記述し、それがどのような文体的効果をもたらすかを明らかにする。一語レベルにとどまらず、句や節が文中で果たす役割も含めて分析を試みるものである。