日常会話で、発話者は言語表現の他に非言語表現も使いコミュニケーションをする。非言語表現とはうなずきや視線などであり、沈黙もそのうちの1つである。近年、沈黙に関する研究が次第に増えてきた。しかし、従来の研究は主に沈黙の意味と機能について分析したものが多く、統語論の観点からの分析はほとんど行われていない。本稿では、談話における沈黙を対象とし、沈黙が挿入される統語環境及び世代差を明らかにしたい。その際、20代と60代の談話を対象とする。まず、20代と60代の談話における沈黙が挿入される統語環境を考察し、次にその統語環境の比較を行う。それによって、沈黙の世代差を検証する。その結果、(1)沈黙が挿入される統語環境においては、20代に比べ60代の方が限定されること、(2)60代の沈黙は独立性が高い構成素の直後に挿入しやすいが、20代では挿入しにくい、という世代差が判明した。