Bulletin of the Faculty of Education, Yamaguchi University

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Bulletin of the Faculty of Education, Yamaguchi University Volume 43
published_at 1992-12

The Study of Psychology in Meiji era (1) : Through the ”Study of Mind” by Totsudo, Katou.

明治時代の心理学研究(1) : 加藤咄堂の「心の研究」から①
Nakamura Heihachirou
Descriptions
心理学についてのわが国の研究の歴史を問題にする場合、それらの資料は数少なく限られている。しかし、城戸氏1)はそれらの研究資料を通して「日本における心理学研究の創始が東洋思想による精神修養を問題とする生活心理学であった」と指摘しているように、日本の心理学研究の最初は道徳的、宗教的、哲学的観点からの人間の日常生活における心の研究であったと見ることができる。その意味から、日本の最初の頃の心理学研究は甚だ通俗的な視点から出発したと言える。事實、古賀氏2)は「上野氏3)は明治の来年から『心理研究』を自ら編集し月刊として出版した。『心理研究』は通俗的な雑誌ではあったが、ほかにそれまで心理学専門の雑誌はなかったので、専門的論文も掲載された。通俗と言えば、この雑誌の発刊に先行して『通俗心理學講演集』というのが何巻か出されている。その例会は年何回開かれたかいま分明せぬが、明治41、42年ごろから聞かれたように想像される」と記している。「通俗心理學講演集」は賞際は「心理學通俗講話]第1輯4)が出版されたのが明治42年 (1909) 9月 (初版)であるので、本研究で取り上げる加藤咄堂氏5)の「心の研究」6)(明治41年 1908 7月初版)は知られる限りにおいて、あるいは、現存する心理学に開する図書としては、ほぼ最初の段階に近いものと見ることができると思われる。本研究では第一章緒言に示されている「心とは何ぞや」、第二章「感受」、第三章「意識」についてのみ取り上げるものである。