Bulletin of the Faculty of Education, Yamaguchi University

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Bulletin of the Faculty of Education, Yamaguchi University Volume 43
published_at 1992-12

Some Remarks on Participation between Music Education and 'Geborgenheit' belongs to Bollnow's Pedagogy

ボルノウ教育学における庇護性と音楽教育の関連性についての小論
Uehara Akihisa
Descriptions
音楽という、表現から教科の内実を成立させる領域の教育・学習においては、これに関わる教育者と子どもが両者の共有する音楽行動の下に作られる信頼感情に支えられながらも、かかる一体感に音楽表現の活動の目的を閉塞させるのではなく、更に音楽の本質に立ち向かうことで、存在一般を意識し存在一般への信頼を得ることができるよう、努力すべきであろう。すなわち音楽教育とは、教育者と子どもによって表現される個々の価値観の伝達或いは授受に留まるのではなく、教育者の音楽表現を契機としながらもここに限定されることなく、より普遍的な客観的精神に向かって聞かれた意味での文化としての音楽を経験できるように、音楽表現を生の形成における内面化の過程として捉える必要がある。音楽教育は、個々の子どもにかかる意識を覚醒させることを目標と考えたい。 本小論において、かかる立場を教育学的視点から明瞭にすることで、音楽科教育を中心とする音楽教育全般の文化の教育としての意義を示したい。庇護性それ自身が内包する性質は、音楽の本質の経験の過程において、経験的に既に自明のものであるかもしれない。しかしここで改めてボルノウ教育学の構造の中で庇護性について考え、生の表現としての音楽の経験を庇護性との関連において把握することで、音楽による人間形成の教育学的特質と意義が確認され、結果的に音楽教育(音楽科教育)の独自性と価値が主張できるものと考えるのである。