筆者は2010年,上海において開催されたICOM(国際博物館会議)第22回大会にICOM日本の一員として参加した。本稿は、この上海大会において行われた協議、決議の内容等に基づき、博物館及び博物館研究の国際動向について考察する。国際的な社会経済環境が激変する中、上海大会では改めて社会発展に貢献する博物館の役割の重要性が確認され、多様な遺産価値の普及、先進国と途上国のパートナーシップの構築、文化観光における博物館の役割強化など今後の方向性が示された。上海大会及びICOMにおける博物館研究の国際動向の検討を通じて、わが国においては、国際動向に対応した博物館政策の確立、博物館制度・人材養成制度・博物館経営の改革が緊急な課題であることが明らかとなった。