韓国では2015年に日本の学習指導要領にあたる「教育課程」の改訂が行われた。いわゆるキー・コンピテンシーを中心に改訂されることになったのである。その前から能力やコンピテンシーなどの用語が扱われてきており、教育界を中心に社会全般においていわゆる「能力」が重視されてきたことと無関係ではない。既に「学習能力」が学力-あるいは学歴-以外の「能力」として求められる状況になっているとも言えるだろう。本研究ではその国家教育課程の一つの教科として図画工作科・美術科を取り上げる。美術教育は今までも創造力や想像力、造形力など様々な能力を養ってきた。今までの美術教育で求められたことと現在の知識基盤社会という新しい状況において求められている資質と能力はどのような違いがあり、美術教育はそれを通した子どもの能力養成にどのようにかかわるのかどが問われており、美術教育において求められる能力をさらに明確にする必要がある。本研究では「能力」の観点から韓国における国家教育課程改訂の目的と内容、その方向性を探ることを目的とする。まず能力の概要と歴史的背景を探り、美術科における「能力」概念を中心に韓国の2015美術科教育課程の特徴と課題を、授業への視座から模索する。