本稿の目的は,新語が形成される際に,どのような手順を踏んで,どのように決定しているのかといった問題を解明することにある。本稿では,「新語が形成される場として「熟議」空間が存在し,その中で複数の参加者の熟議を通して新語が作り出されていく」というように新語形成プロセスを設定した。そして,参加者の言語行動を観察することによって,新語形成のダイナミズムを観察できるようになると考えた。その結果,次のような新たな知見が明らかになった。①「表態」と「新語形成フェーズ」という談話単位を新たに設定することによって,新語形成談話の展開を把握した。② 新語形成フェーズは、「認知」「枠組み」「提案」「審議」「脱線」の5つに分類することができ,これらを行き来して新語の形成・決定を行っている。③ 新語形成談話は認知から始まり,その後枠組みへと繋がる。このプロセスを経て提案へと繋がる。④ 認知は新語の経験に関わる言語行動と,枠組みは新語の語形や語種,読みに関わる言語行動と,提案は既出の情報を総括する言語行動と,審議は新語の是非を問う言語行動との結びつきがそれぞれ強い。⑤ 「新語を形成するまでの過程に関する議論」と「形成された新語に関する議論」の切り替わりの際,沈黙などの停滞の言語行動がきっかけとして現れる。