本研究では、自閉症と精神遅滞における知的障害と行動との関連を検討した。いずれも年齢を等質にしたうえで、知的障害の程度のほぽ等しい自閉症群と精神遅滞群(各66名)、自閉症で知的障害の重い群と軽い群(各32名)、ならびに精神遅滞で知的障害の重い群と軽い群(各27名)の計3対についてその行動を比較したところ、「反響言語」「対人回避的行動」「動作に対するこだわり」「音に対する過敏性」「視線の異常」などの行動については、自閉症群と精神遅滞群の間に差が認められたが、知的障害との関係は認められなかった。遂に、「言語の有無」 「言語理解」「指さし」「身ぶり」「触覚・痛覚の異常」などの行動については、自閉症群と精神遅滞群の間に差は認められず、自閉症と精神遅滞の両方において知的障害の程度による差が認められた。これらの行動は、主として知的障害に依存する行動であると考えられた。他方、 「友達と遊ばない」「自己刺激行動」「睡眠覚醒の異常」などに関する行動においては自閉症と精神遅滞で知的障害との関係が異なっていたことから、これらの行動については発現の仕方が自閉症と精神遅滞で異なることが示唆された。