ヘミスファイリア目は子襄菌類中の小房子襄菌亜綱 (Loculoascomysetidae) に属し,その子襄子座は扁平半球状でしばしば放射状の菌糸構造からなり,また子実層が子座殻の下面に発達する点で他の子襄菌類の目から区別される。日本におけるこの目の菌類の研究史は,日本の研究者によって採集された標本に基づいてヨーロッパの学者によって命名・記載された第1期(1898-1920),主として日野・日高によって斑竹の成因菌について研究された第2期(1935-1955),および日野と著者によって西日本を中心に広く調査研究された第3期(1955-)に代別される。日本産ヘミスファイリア目菌類として,ミクロチリウム科に4属10種,ミクロペルチス科に5属8種,パルムラリア科に1種,アステリナ科に7属26種,スキゾチチリウム科に2属4種の合計19属49種が記録され,その内の42種は日本固有種である。これは,この目の菌類の高度に分化した寄生性およびその局限された分布域によるものである。またとくに Asterina 属の種数が最も多く15種に達しているが,これは Asterina 属が世界的に多くの種数からなり,それぞれ多数の植物上に分化した寄生性を示していることによく一致する。そのほか, Phrogmothyrium 属には5種, Lembosia 属, Echidnodella 属および Micropeltis 属にはそれぞれ4種ずつが含まれている。(以下,略)