急速な経済成長が続く中国の中で労働移動に伴う人口の流動が経済・社会に与える影響は大きい。本稿の目的は、全国流動人口の調査結果を用いて2000年代人口流動の実態を考察するとともに、流動人口の規模及び流出入の量的関係に基づき、人口流動に固有のパターンを検出することを通じて、「流動区分圏域」という中国人口流動に固有の特徴を解明し、その決定要因を明らかにすることにある。主な考察・分析の結果、以下のようなことが明らかになった。(1)2000年代の省間流動の規模からみれば、流動人口の流動元は、四川、江西、安徽、湖南が依然として最も重要な地域である。流動人口の重要な流動先は、広東、上海、北京に加えて長江デルタの江蘇、浙江も注目されるようになった。純流動人口の流出と流入の「反転」現象が見られた。(2)2000年代の省間流動の量的関係からみれば、7地域グループのマトリックスでは、北部、東部と中部の同地域グループ内部の省間流動が最も活発化している。地域グループ間の流動で北部、東部は最も重要な流動先である。10組の地域グループは人口規模(選択指数100)以下の流出入地域であることが判明した。(3)人口流動をパターン化する判定基準を考案し、その基準に基づいて省間流動の規模及び流出入の量的関係の下で全国31省を強、中、弱の流入・流出及び流出入の7流動区分圏域に明確に画定できることが判明した。「流動区分圏域」を有することは中国の省間人口流動に大きな特徴であり、そこから流動結果をマクロ的に読むことができる。(4)流出、流入及び流出入の3視点でみる各流動区分圏域の省間流動を決定する要因のばらつきが見られた。経済的・社会的及び地理的要因と比較して既存流動人口要因の重要性が非常に高い。過去の流動人口は、現在の流動規模と起点・終点を規定し、移動行動を喚起させる重要な存在である。