現行の中国の政策性農業保険はアメリカの運営方式をモデルにしたものである。その理由としてアメリカの農業保険は1938年の『連邦農作物保険法』からはじめられ、70年近くの歴史をもって大量の経験を積み立てた。特に、1944年の『農作物保険改革法』に基づいての改革は世界で最も成功し、加入率は80%と高く、アメリカの農業経営の安定及び農家の安定収入に多大な貢献を果たした。そして、中国の農業保険研究機構は2000年から2001年にわたって何回か研究員をアメリカに派遣し、アメリカの農業保険を考察し、導入の取り組みを進めてきた。もちろん、制度の設定において中国の事情に則する仕組みを工夫した。しかし、アメリカの農業経営は土地が集中し、大規模であることが特徴である。これに対し、中国の農業経営は規模が零細で、農地が分散している。この農業経営状況の違いが農業保険の効率性に影響を与えるとすれば、むしろそれは日本の農業経営に近く、日本の農業共済運営方式を導入するべきだというところにあると思われる。そこで、本稿はアメリカの運営組織と日本の運営組織の効率性を保険経済の理論に基づいて比較研究を行った。結論として、日本の農業保険運営方式はアメリカのそれより低コストで農業経営の安定・農家生活の保障の役割を十分に果たすことができると考えられる。先行研究について、近年中国内での中国農業保険に関する研究が多く見られる。研究テーマは大きく分けて財政上の補助問題及び国際の比較研究が圧倒的に多い。しかし、日本での中国農業保険についての研究は見当たらない。本稿は保険理論、経済理論、国際比較などの視点から農業保険の組織の効率性について論述したい。