少子高齢化に伴い、高齢者就労が進展するのは一般的である。高齢化社会に突入した台湾では高齢者就労の必要性が高いにもかかわらず、就労率は極めて低い。更に早期定年退職という現象も出てきている。本稿では、高齢者の就労状態と就労意欲を軸にして、就労意欲類型を作成し、高雄市と高雄県における高齢者の実証的な調査結果を用いて、4つの類型を規定する家族構造(居住状態)と価値意識を明らかにした。それには、以下のような特徴があった。1)多くの台湾高齢者は就労意欲を持っているが、積極的に就労行動を取っていない。それには「雇用環境の厳しさ」と「伝統的な価値意識」とが深く関係している。2)家族を大切にする台湾高齢者にとって、親子同居・別居という居住状態が就労行動に大きな影響を与えている。「無職意欲型」と「就労離脱型」は親子同居する者に多く、「就労意欲型」と「就労無欲型」は別居するものに多い。3)多くの台湾高齢者は「親に仕送りをするのは当然である」、「含飴弄孫」などという伝統的な価値意識を持っていると考えられているが、実際には経済的に自立する傾向が強くなっている。4)行動様式と居住状態は高齢者の生活満足度と密接な関係がある。「就労意欲型」と「就労離脱型」は職場活動、社会活動における満足度が高いのに対して、「就労無欲型」と「無職意欲型」は家庭活動における満足度が高い。5)近代化に伴う家族構造の変化によって、台湾高齢者の価値意識や行動様式は内向き(家族志向)から外向き(職場・地域社会志向)へと移行している。以上のことから、将来的には、台湾高齢者は「就労意欲型」と「就労離脱型」が増えていくと予測されるため、高齢者の就労と社会参加を促進する必要がある。