地方自治体においては,非常に厳しい財政のもと,行財政改革が進められ,その一手法として管理会計の手法である,ABC(Activity-Based Costing: 活動基準原価計算)の活用が注目を浴びてきた. しかし,さまざまな理由からその導入は進んでいない. またABC の提唱者であるKaplan からも,従来のABC については複雑で高コストなことから,その導入の難しさについての認識が示され,新たな手法としてTDABC(Time-Driven Activity-Based Costing: 時間主導型活動基準原価計算)の提唱が行われたところである. しかし,このTDABCの有用性については,国内の学者からは賛否があり,また国内の地方自治体への実証研究は見当たらない. そこで本研究では,論題にあるとおり,地方自治体におけるTDABCの実証研究を行い,その有用性についての検証を行うことを目的とする. そして副題にもあるとおり,ABCにおける理論・実践の流れの中で,ABCにどのような問題点があり,なぜTDABCが提起されるにいたったのか,またTDABCそのものの有用性についてどのような先行研究がなされているのかをまず明らかにする. さらに,その先行研究においてなぜ実証研究が求められているかを明らかにし,適用対象である地方自治体に対して,ABCとTDABCではどのような違いが生じるのかについて比較検討する中で,TDABCの有用性を検証することを目的とした. (以下,略)