山口県中部の秋吉石灰岩においては、小澤(1923)が提案した層序の逆転について、決定的な形成モデルが提案されていない。本報告では、最近得られた知見に基づいて、形成モデル構築のための制限条件を検討する。それは、超巨大海山の衝突と生物礁の付加であり、逆転構造の広がりについての新たな地質情報である。また、海溝充填堆積物とされた常森層の形成場についての知見も重要である。これまで、確かな形成モデルが提案されなかったのは、現在の地球上に、秋吉石灰岩の逆転モデルに相当する地質イベントが存在しなかったことが関係している。斉一説に基づいた解釈が困難であったためである。今後は、新たな制約条件の下、新たな形成モデルの構築を図る必要がある。