Bulletin of Yamaguchi Science Research Center Volume 3
published_at 2023-07-20
全国には未利用なオリジナルなカンキツ類が数多く存在している。山口県のオリジナルカンキツの一つに長門大酢(ながとおおず)があり、柑きつ振興センターに1本のみが現存していると考えられている。この幻のカンキツの果実は、大果で果汁が多く、隔年結果を起こしにくいなど、加工や栽培に適した形質を有している。しかし、このような未利用カンキツについて、その価値や有用性などの検討は行われていない。そこで、具体的な利用法を示すために、長門大酢の特徴を生かした料理や菓子、調味料の材料としたレシピの作成を行い、未利用カンキツの有効性について検討した。
香酸カンキツの長門大酢は上品で爽やかな香りがあり、ユズよりもレモンに近い酸度(4.8%)、糖度(9.4%)、糖酸比(1.97)を示した。一般加工品として、長門大酢胡椒、塩長門大酢、長門大酢のドレッシング、長門大酢ポン酢および長門大酢のはちみつ漬けのレシピを考案した。また、多くの世代に受け入れられるように菓子として、長門大酢ゼリー、長門大酢のレアチーズケーキおよび長門大酢のマドレーヌのレシピを考案した。さらに、より、飲食店でも利用可能な料理として、鶏の唐揚げ長門大酢ソース、アジの長門大酢エスカベッシュ、長門大酢とサーモンのヴァプール クリームソースおよび生搾り長門大酢サワーのレシピを考案した。これらは全て家庭でも作ることができるレシピである。これらの料理から、長門大酢は爽やかな香りと柔らかな酸味を生かした調理ができることが分かった。今後、より幅広いライフステージの人々に受け入れられるレシピの開発を通じて、地域の食材による食育や未利用の農産物の掘り起こしが可能性であることを示した。