Bulletin of Yamaguchi Science Research Center

山口大学山口学研究センター

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研究報告(2016年度採択プロジェクト)
絵画は、描かれると同時にそれらを構成している材料である顔料、接着剤(膠)、基底材(紙、板、布など)の劣化が始まるとされ、その時点から保存や補修を考える必要があると言われている。特に文化財としての価値故に保存されている絵画の修復は、その絵画を後世に伝えるという大きな役割を果たす必要がある。この修復に際して、過去に行われた修復がかえって絵画の劣化を引き起こしている事例が報告されており、主に昭和20 年代から30 年代に行われた合成樹脂を用いた修復において大きな問題となっている。その原因である劣化あるいは白化した合成樹脂層を取り除きつつ、さらに確実な修復を実現する方法が求められている。本報告では、日本画家であり国の選定保存技術保持者である馬場良治氏が開発した特殊な膠による絵画修復の作用機序について、モデル実験を通じて考察を試みた結果について述べる。
PP. 1 - 4
現代社会はグローバル化の影響を受けながらも、平和で持続可能なローカルとは何かを考えていく必要があり、学校教育においてもそうした課題に向き合える人材育成が求められている。また、新学習指導要領では高等学校において「歴史総合」・「地理総合」の必履修化が示され、それに対応する教材開発が求められている。本研究では、これらの課題を見据えながら、歴史的思考と地理的思考の両面とGIS 活用も含む学習活動について検討することとした。山口県の歴史事象を整理し、そのうち複数の題材をテーマとした座学とフィールドワーク、GIS 活用を組み込んだワークショップを開催した。座学とフィールドワークを一連とする学習形態は、参加者の主体的な学びを促すことに寄与し、身近な地域や生活の中に歴史があることが認識されると、関連する地域として世界を具体的に捉えることができるようになることが分かった。
Kagohara Kyoko Fujimura Yasuo Isobe Kenji Tamura Miwako
PP. 5 - 11
研究報告(寄稿文)
本論は、ボランティア等の活動を通し、学生による様々な社会貢献について、文献と簡易な現地調査によって概観したものである。山口大学の場合、学生の学外での活動に対してサポートの歴史が長く、学生の活動内容も時代と共に変化してきている。学生の課外活動は単に変化しているだけでなく、次第に複合化し、高度化を遂げている。山口大学における学生による社会貢献の一例として、本論では2019 年度に実施されたインバウンド対応企画である「Mini Bus Tour」について紹介するが、従来型の異文化交流ツアーやモニターツアーよりも企画段階で良く練りあげられており、今後の継続次第では社会的・経済的な貢献も期待できる。
PP. 12 - 19
本研究は、山口県における観光需要の季節変動性について、19 の市町における2013 年から2018 年の6 年間のパネルデータを用いて分析するものである。分析では、季節変動性に影響を与える要因を、自然的要因である気象データと社会的要因である祭りやスポーツイベント、遺産や美術館・博物館などのデータを用いて推定を行った。分析結果、(1)国内観光では、自然的要因では、日照時間、風速、降水量という気象要因が、社会的要因としては、祭り、国宝・重要文化財、記念物・天然記念物、国立公園・国定公園、動物園・水族館が、それぞれ観光需要を刺激する作用を持っていること、(2)訪日観光客では、美術館・博物館のみが観光需要の誘因となっていることが明らかになった。
PP. 20 - 31