Bulletin of Yamaguchi Science Research Center Volume 1
published_at 2021-03-16
絵画は、描かれると同時にそれらを構成している材料である顔料、接着剤(膠)、基底材(紙、板、布など)の劣化が始まるとされ、その時点から保存や補修を考える必要があると言われている。特に文化財としての価値故に保存されている絵画の修復は、その絵画を後世に伝えるという大きな役割を果たす必要がある。この修復に際して、過去に行われた修復がかえって絵画の劣化を引き起こしている事例が報告されており、主に昭和20 年代から30 年代に行われた合成樹脂を用いた修復において大きな問題となっている。その原因である劣化あるいは白化した合成樹脂層を取り除きつつ、さらに確実な修復を実現する方法が求められている。本報告では、日本画家であり国の選定保存技術保持者である馬場良治氏が開発した特殊な膠による絵画修復の作用機序について、モデル実験を通じて考察を試みた結果について述べる。