Journal of East Asian studies

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Journal of East Asian studies Volume 3
published_at 2004-12

Decentralization, privatization and corruption in reform-era China : a comparative study with the case of Russia

改革期中国における分権化、民営化と腐敗 : ロシアの事例との比較
Nomura Takahiro
Descriptions
この論文では、移行期中国における市場化、分権化、民営化等の改革に伴う腐敗(レントシーキング)の問題を、初期条件、誘因、コントロール、経済的効果を中心に、ロシアとの比較を通じて分析する。経済学者の多くは、腐敗が経済パフォーマンスに悪影響を与えると考えているが、一定の発展段階では市場経済化、民間部門の発展、さらに経済成長や政治的安定と両立しうる可能性がある。中国については少なくとも90年代半ばまでは、こうした仮説がある程度適合する条件があった。中心的議論は、腐敗の経済的効果は、一定の初期条件を背景に、アクター(官僚、企業)の行動に作用する3つの要素(誘因とコントロール)のバランスによって変化するということである(第1章)。第2章では、地方政府のレントシーキングの誘因とコントロールについて論じる。財政的分権化の結果、中国では地方的開発主義と保護主義の傾向が広まったが、これらは不完全な市場への政治的介入を通じて、地方と組織の個別的な経済利益の最大化をめざす「腐敗」行為である。中国の中央政府は経済的文献と政治的集権制によって、ロシアの場合よりも、地方エージェントに対する経済的誘因付けとコントロールバランスを維持し、純粋な収奪ではなくむしろ企業活動を通じた生産指向型レントシーキングを促進した。第3章では、企業制度改革及び民営化と腐敗の関係について論じる。中国では公有制の基本構造に手をつけず、誘因面の改善で企業経営と生産の効率化を促そうとしたが、企業幹部の利益と責任がリンクされなかったので、国有資産流出を助長し、90年代半ばには株式化を通じた事実上の私有化が進む。しかし幹部の財産権は非公式なものに留まった。また私営企業家は政治的に脆弱な地位に置かれた。このため、民営化の過程で富を蓄積したオリガーキーとマフィアなど「民間部門」による国家キャプチャーが進んだロシアとは異なった結果をもたらした。結論(第4章)では、3つの要素にそって本論を総括する。