情報社会の到来、とりわけ、情報通信技術(Information and Communication Technology)の発展による、パソコンやインターネットが一般の社会生活になくてはならないツールとなるにつれて、個人の尊厳と公共性との衝突が加速度的に深刻化している。個人情報において個人の尊厳とは主に個人が自己情報を可能な範囲でコントロールすることであり、公共性とは公的機関が国民の個人情報を取り扱うことである。したがって、個人情報において個人の尊厳と公共性との衝突は、つねに公的機関が公共管理による効率を向上させるために膨大な個人情報を取り扱うにあたって、たびたび問題となった個人情報の漏洩の形で現れている。それを緩和するために、中国は個人情報に関する専門的な法律の制定を通じて個人の尊厳と公共性のバランスを取ることを図っている。本稿は宇賀克也著『個人情報保護法の逐条解説(第五版)』(2016年)、同「個人情報保護法改正の意義と課題」『行政法研究』(2016年)、斉愛民著『拯救信息社会中的人格』(2009年)、肖登輝「論行政机关个人信息保護的收集与个人信息保護的冲突的協調」『理論与実践』(2017年)などの研究成果をふまえつつ、個人の尊厳と公共性および両者の衝突という基本的な概念、日本の個人情報保護の立法の経緯と法律の体系、中国の立法の経緯と法制の現状を整理し、両国における個人情報保護法制の内容の比較を通じて、中国の不備を纏め、それらに対して、中国法曹界における最新の見解を挙げながら、中国の個人情報保護法の立法の動向を探ってみたい。