ベトナム語1には ra(出る)、vào(入る)、lên(上がる)、xuống(降りる)、sang(渡る)、qua(渡る)、về(帰る)、lạ(i 帰る)、tớ(i 来る)、đến(来る)、đ(i 行く)などの方向動詞がある。ここでは、r(a 出る)に注目し、本動詞としての使用がなく、文法化が進んでいる本動詞以外の意味と用法の特徴を明らかにすると同時に、日本語の対応表現「出る」、「出す」と対照したい。ベトナム語の ra の用法の、「動詞+方向動詞 ra」と「方向動詞 ra+動詞」の二つの構造で、前者は、ベトナム語の ra と他の動詞の間には、副詞や接続詞など入れることができ、後者は、目的という意味を表す。一方、日本語では「動詞+方向動詞『出る』」の形だけがあり、「方向動詞『出る』+動詞」の形がほとんどなく、動詞と方向動詞『出る』の間に何も入らないという特徴がある。